投資方法

理論株価の算出方法2 (予想PERの導き方)

皆さんこんにちは。医師で投資家のジョーです。

今回は前回の記事『理論株価の算出方法』の後半部分となる予想PERの導き方についてお話します。

前回記事の続きとなるので、前回記事を読んでない人は以下の記事をご覧ください。

理論株価の算出方法1(株価はこの方程式で決まる!)
https://drjoe-blog.com/stock-study1/

 

 

理論株価は以下の方程式で求めることができます。

 

理論株価=予想EPS×予想PER

 

予想EPSは前回の記事で決算短信や会社四季報から調べることを説明したので、今回は予想PERです。

PERはEPSとは異なり『投資家の期待度』を表す指標なので抽象的でわかりにくいと思う方も多いのではないでしょうか?

この記事を読むことでPERの解釈や将来予想(期待)されるPERを自分で推測することができるようになります。

ぜひ投資判断の参考にしてもらえたらうれしいです!

それではよろしくお願いします。

 

株価収益率(PER)ってどんな指標?

株価収益率(以下PER)は以下の式で表されます。

 

PER=株価÷1株純利益(EPS)

 

例えばEPSが100円で株価が1000円であった場合、PERは10倍となります。

PERは『1株あたりの純利益に対して何倍の株価になっているのか』を表す指標です。

一般的にはPERは割高割安を表す指標で、PERが高ければ高いほど純利益と比較して株価が上がっていることになるので割高になります。

一般的にはPER15以上を割高、15未満を割安とすることが多いです。

ただ業種によってPERの評価水準は異なるので、PERの数字だけで割安度を判断することはお勧めしません。

たとえばイケイケのIT企業であればPERが20倍でも割安と判断されることがある一方、銀行株などの成長性の乏しい業種であればPER10倍でも割高と判断されることがあります。

さらにもう1つPERには大事な側面があります。それは

『PERが高いほど投資家に期待されているので株価が上がりやすい』ことです。

PERはまさに投資家の期待度の指標ともいえます。

僕はPERの考え方としては割高割安の判断というよりは『期待度』を意識しています。

そして株式投資は『安く買って高く売る』が原則なので、理想の売り時はPERの高い時(投資家の期待度が高い時)です。

ではPERがどの程度高くなることが期待できるのかをあらかじめシュミレーションできたとすればどうでしょう?ワクワクしませんか?

それでは本題である期待されるPER(予想PER)の算出方法について説明していきます。

予想PERの算出方法

2つの側面から予想PERを算出する

僕は普段予想PERを算出する際、2つのアプローチを行います。

以下の2つです。

 

  1. その会社の過去のPERの推移を確認する
  2. 営業利益増加率(増益率)から予想PERを算出する

 

①についてですが、PERは業種によって基準値が異なります。

よって同じ会社の過去のPERを比較することで、投資する会社の過去の高いPER水準はどのぐらいなのかを調べることができます。

 

もう一つのアプローチが営業利益増加率(増益率)を元にPERを算出する方法です。

PERは投資家の期待度を表す指標で期待が高いほどPERは高くなります。

ではどのような会社が投資家に期待されると思いますか?

それは継続的に利益が増え続けている会社です。

そこで参考になるのが営業利益増加率です。

「純利益増加率ではだめなのか?」と思う人もいますが僕は営業利益を重視しています。

理由として営業利益は会社の本業の利益を表しており、単年のみ計上される利益や為替損益、税金の影響を受けないので本来の会社の稼ぐ能力そのものを表しているからです。

よって僕は純利益ではなく営業利益を使って増益率を評価してます。

 

では次にこの2つのアプローチから実際に予想PERを算出する手順について説明していきます。

過去の会社の高値PERを参考にする

まずは過去の会社のPERの推移を確認して、高値PERを確認する方法です。

2つの方法があるので紹介します。

 

〈簡易版〉
会社四季報で確認する

〈正確版〉
有価証券報告書で過去の高値株価を調べて、その年のEPSで割る

 

ここからは僕が実際に投資しているチャームケア・コーポレーション(6062)を例に説明します。

会社四季報で確認する

まずは会社四季報で確認する方法です。四季報には株価チャートの横に過去3年平均の高値PERが記載されているのでその値をそのまま利用します。

四季報を見ることですぐに過去の高値PERが確認できるので、この方法であれば忙しい人でもできます。

ただし、この方法は簡単なのですが欠点が1つあります。

それは「EPSが下がった時にPERは相対的に高くなる」ことです。

たとえば株価が1000円としてEPSが去年が200円、今年が100円だった場合、同じ株価でもPERは去年は5倍に対して今年は10倍と2倍に上がります。

このように株価が同じでもEPSが異なるだけでPERは変化します。

株価が高い時に売ることが勝てる投資家の条件なので、理想の売り時は『EPSが増えていて、かつPERが高い時』となります。

四季報のPERだとEPSが減少したことで結果的にPERが高い値を拾ってしまう可能性があります。

そこでその条件を除外することができるもう1つの方法が有価証券報告書や決算短信で過去の株価とEPSを調べて自分でPERを計算する方法です。

有価証券報告書と決算短信を見て過去の高値PERを自分で計算する

まずは有価証券報告書で過去の「最高株価」を調べます。

以下の表はチャームケアの2022年度有価証券報告書です。

最初の2ページ目に以下のように過去の年度ごとの最高株価が表記されています。

(●や△などの横の数字は株式分割後の株価を表しています)

次に決算短信で過去のEPSを調べます。

ここで注意が必要なのが有価証券報告書や株探などで過去のEPSを調べる方法もありますが、株は分割で発行株式枚数が2倍3倍に増えることがあり、EPSが半分や1/3になることがあります。

上記の表の●や△の値も分割によって株価が下がっているのです。

ただし株価が下がってもその分発行株式枚数が増えるので株の価値自体は変わりません。

そこで決算短信でEPSと発行株式枚数の両方を確認することでEPSが分割前のEPSなのか分割後のEPSなのかを確認することができます。

なので僕は決算短信でEPSを確認することをお勧めします。

以下の表が2022年後チャームケアの決算短信の1枚目と2枚目に記載されているEPSと発行株式枚数になります。

(引用:チャームケア2022年度決算短信1枚目)

(引用:チャームケア2022年度決算短信2枚目)

1枚目でEPSを確認し、2枚目の発行株式枚数の個所の①期末発行済株式数の値を調べます。

すると2022年度と2021年度で発行株式枚数が同じなので分割の影響は考慮しなくていいことになるので、再度有価証券報告書の最高株価の値を確認します。

2022年度は1488円、2021年度は1006円となります(2516円は株式分割前の株価なので使用できません)。

このように5年分ぐらい株価とEPSを調べてPERを算出します。
チャームケアでは以下の値となりました。

 

ここで注目なのが2021年度です。2021年度は前年と比べEPSが増加(利益が増加)しており、かつPERが31.6と高いのでこの値を採用します。

また最低株価から低PERの指標も求めることができるので割安の判断としても使用することができるのでこの方法はおすすめです。

営業利益増加率(増益率)から予想PERを推測する

次に営業利益増加率(増益率)から予想PERを導く方法について説明します。手順は以下の通りです。

 

増益率から予想PERを算出する手順
  1. 会社四季報で今期と来期の増益率を確認する
  2. 基準PERを決める
  3. 増益率と基準PERから予想PERを算出する

 

では順にみていきましょう。

会社四季報で今期来期の増益率を確認する

まずは四季報で昨年度、今年度、来年度の営業利益を確認して営業利益増加率を計算します。

〈営業利益増加率〉

(今年度営業利益-前年度営業利益)×100/前年度営業利益

以下の表がチャームケアの営業利益と営業利益増加率です。

 

 

今期の営業利益増加率予想は87.5%で来期は38.6%となっています。基本的に使用する増益率の値はこの平均値を使用します。

 

増益率=(87.5+38.6)/2≒63%

 

チャームケアの期待できる増益率は63%となりました。

ただ今期の増益率は83%とさすがに高すぎるので来季の予想である38.6%に近い40%を採用する方が無難と思うので今回は40%を採用します。

このような判断は投資家自身の感覚が大事です。ただし過大評価はあまりよくないので僕は基本的には増益率は控え目に評価しています。

基準PERを判断する

基準PERとは増益率を加味して今後予想PERを算出するにあたって基準となるPERです。

一般的には平均であるPER15を基準PERとするのが妥当と思いますが、日経平均PERを基準PERとする方法もあります。

今現在日経平均PERは12ほどなので12を基準PERするといった具合です。

僕自身は株価は日経平均に影響されるものなので日経平均PERを参考にしています。

増益率と基準PERから予想PERを算出する

増益率と基準PERがわかれば以下の式で予想PERを算出できます。

 

予想PER=基準PER×増益率^年数

 

例えば2年先のチャームケアの業績を織り込んだ場合、基準PERを12としたら予想PERはこのようになります。

 

予想PER=12×1.4×1.4=23.5

 

このように増益率から算出したPERは23.5となりました。

理論株価を算出する

これで理論株価を算出することができます。理論株価は以下の方程式です。

 

理論株価=予想EPS×予想PER

 

そしてチャームケアの予想EPS、予想PERは以下の通りとなりました。

  • 予想EPS:136.5円(四季報での今期来期EPS予想の平均値)
  • 予想PER 1:31.6倍(過去のPERで判断した値)
  • 予想PER 2:23.5倍(増益率から推測した値)

 

よって理論株価はこのようになります。

 

理論株価 1:136.5×31.6≒4300円
理論株価 2:136.5×23.5≒3200円

 

現在チャームケアの株価は1200円ほどです(2023/2現在)。

この計算だと2年後に3200〜4300円に上昇することになります。少なく見積もっても2年で株価2倍以上です。

このようにして理論株価を算出し現在の株価と比較することで客観的に売買判断が行えるようになります。

とてもいい方法なのでぜひとも参考にしてください。

まとめ

以上2回にわたって理論株価の算出方法について説明しました。

いかがでしたか?

客観的指標をもとに理論株価を算出することで、一時的な株価下落に遭遇したとしても自信をもって保有を継続でき、最終的に長期目線で株価上昇の恩恵を受けることができます。

もちろん投資に絶対に正しい方法など存在しないので、いくら理論株価が高くても実際に株価が上がらないこともあります。

ただこのように理論株価の算出を習慣化し、何度も売買を経験することで1銘柄単位では損してもトータルで損をする可能性はかなり低いとので根気強く実践してみてください。

 

最後に1つ注意点をお話します。それはこの投資法は毎四半期の決算短信と会社四季報は必ず確認することが必要であることです。

会社の業績予想は当初計画されたものが変更になることがよくあります。

今回の理論株価の算出はEPSや増益率を参考にしているので、通期予想変更に伴いEPSや営業利益が変わることがあれば当然理論株価も変化します。

なので最低でも毎四半期の決算短信と会社四季報は必ず確認し、EPSや営業利益の予想に変化がないかを確認してください。

以上長くなりましたが理論株価についてお話していました。

これからも『投資で人生を豊かに』をスローガンに発信を続けていくのでよろしくお願いします!